暴走環状線
〜警視庁対策本部 刑事課〜

昴はまだ監視カメラと格闘している。
紗夜と淳一が戻って来た。

「ダメですか富士本さん?」

「ああ、どこにも映っていない様だ」

「府刑の周りの監視カメラは、全て確認しました。映っていないはずはないのですが…」

昴の疑念が紗夜に伝わる。
(おかしい…)

「あら、課長あれは?」
窓から外を見ていた咲が、眼下を見下ろす。

「お、やっと届いたか。TERRA(テラ)コーポレーションからの贈り物だよ」

「ラブさんから?」

皆んなが新しい警察車両を見る。

「車からあらゆる監視カメラや、ここのデータベースへ衛星を通じてアクセスできる。完全防弾仕様で、幾つかの武器も搭載している様だ」

「凄いわね」

「君達には、今後あれを使ってもらう」

3台の車両が下ろされた。

(しまった!)

「どうしました、紗夜さん?」
紗夜の動揺が《《聞こえた》》昴。

「BMは、きっと待機していたトラックに積み込まれ、運ばれたんだわ」

「確かに…公安部を出し抜くくらいだから、監視カメラくらい想定済みよね」

「しかし、いったい誰でしょう、今更保釈金800万も払って久米山を?」

「800万だって⁉️」
淳一が驚きの声を上げる。

「昴、久米山の罪状は分かった?」

「はい、未解決事件特捜部の方にも協力してもらい、何とか見つけました」

「刑期は10年だろ?結構な事件のはずだ。なぜそれを見つけるのに苦労したんだ?」

「ええ、なぜかほとんど記録が無くて…」

「捜査官と検察の怠慢か?」

昴がモニターに写真と資料を映す。

「久米山勝、当時21歳。事件当日、宮崎美穂、
加藤吾郎、浜田智久と4人で、都内の清和幼稚園に通う6歳の少女を誘拐。車で逃走を図るも、少女を送っていた運転手の車が追いついて、敢えなく失敗。駆けつけた警察官達に現行犯逮捕された」

「…それだけ?」

「この事件はこれで終わってますが、被害者側は重刑を要求。窃盗や、諸々の余罪もあっての判決です」

普通に考えても不自然な実刑である。

「よほど反省の色が無かったとか、態度が悪かったとかじゃねぇか?」

「それなら、法廷侮辱罪がつくわ」

「他の3人は?」

「それが…余罪はなく、強要されたという事で、保釈金が払われて釈放されています」

「今回といい、いったい誰が保釈金を?」

「その記録はありません」

紗夜にはもう一つ気になることがあった。

「バスで亡くなった、宮崎美穂だけど…。コンビニのバイトの帰りでしたよね」

「そうよ、あんな遅くまで危ないわよね」

「昴さん、もう一度最初の資料を」

事件の内容が書かれた、殺風景な資料。

「久米山と同棲していたってことだけど、調べたら彼女があの目黒の高級マンションに越したのは、この日付けの直ぐ後なんです」

「マジか!おかしいとは思ったんだよな、この2人じゃ、宝くじでも当たらなきゃ、とても買えない物件だぜ」

「まさか、一括購入なの?」

「ええ、確かに新築ではなく、不動産業界も苦しいから、億はいかないと思うけど…」

「物件の業者に確認した方がよさそうね」

「確か…ハッピー不動産だとかで、今は大手の岩崎建設に吸収されてます」

「えっ💦紗夜…今ハッピーって言った?」

「はい、面白い名前ですよね(笑)」

(マヂか❗️(笑)じゃないし💧)

「あ、後で行ってみます💦」
咲の異常な動揺を感じた紗夜が焦る。

(な…なにかしら?マズイこと言ったかな?)
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