暴走環状線
終章. 暴走環状線
〜池袋駅〜

山手線 内回り池袋駅。
そのホームに立つ時任亮介。

最後尾の車両停車位置。
待ち人の数は少ない。

落ち着かない様子で、携帯を握りしめている。



〜上野駅〜

山手線 内回り上野駅。
そのホームに立つ相沢湊人。

最後尾の車両停車位置。
待ち人の数は少ない。

周りの人物に集中し、左手に携帯を握りしめ、右手は懐の銃を握っている。



〜品川駅〜

開いていたタブレットPCを閉じる。
車が停まった。

「社長、時間がありません急ぎましょう」

秘書の土屋香織が、菅原義光を急かす。
札束の入ったアタッシュケースを持ち、走り出す土屋に続く。



〜30分前〜

「社長、奥様からお電話です」

土屋がノックもせずに入って来た。

「な、なんだ急に」

「火急の様子です!」

冷静な土屋の慌てぶりに、電話を取る。

「あなた、梨香が、梨香が!」

「落ち着け!何があった?」

「梨香が誘拐されたの❗️」

「なんだと⁉️」
大声で反応する義光。

「警察には届けたのか?」

「ダメ❗️届けたら殺されるわ」

携帯が鳴った。
取り出した義光の目が大きく開く。

梨香の携帯からの着信であった。
妻からの電話を土屋に渡す。

「もしもし、誰だお前は❗️」

「落ち着け。娘の命が惜しけりゃ、5000万持って、山手線内回り、品川駅21:00発の電車に乗れ。警察に連絡したら即殺す」

切れた。

その背後では。
「土屋、主人に代わって!早く!」

「すみません、今は電話に出れる状況ではありませんので」

そう言って切った土屋。

「おい、今すぐ5000万用意しろ」

「ちょうど今夜相沢様に渡される5000万がございます」

「そうだった!それでいい、直ぐに品川駅へ行くぞ、車を回せ」

「では、私もご一緒します」
ケースを持って一緒に部屋を出た。

エレベーターの中で電話をかける義光。

「あ、相沢か!俺だ、娘が…」

「すみません。今は電話に出れる状況ではございません」

戸澤が電話を切った。



〜品川駅〜

山手線内回り品川駅。
20:59。

「間に合いましたね」

「ああ。すまない君にまで。君はもう帰りなさい。あとは一人で大丈夫だ」

電車が入って来た。


「そうは参りません、…菅原義光」

「な…何だと?」

驚く菅原を車内へ押し込み、土屋も乗り込む。



〜池袋駅・上野駅・品川駅〜

電車のドアが閉まった。
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