ハロー、愛しのインスタントヒーロー
そうだよね、と半笑いで視線をさまよわせる彼に、ああそうか、気まずいんだな、と察する。
当たり前だ。強引にキスして好きだのなんだの言い合った挙句、喧嘩別れのようになっていた。絢斗としては、あの日で全て終わったつもりだったんだろう。私も、もう終わったんだと思っていた。
歩み寄ることをしないで、子供同士の私たちのまま、我儘をぶつけ合って終わろうとしていた。
「私、絢斗と一緒にいること、諦めないよ」
「え――」
「今日はその話をしに来たの」
下から真っ直ぐ彼の目を見据える。絢斗が息を呑んだ。
「……でも、それは」
「絢斗。好きだよ」
大きい瞳が揺れる。
「私のこと、好きか嫌いかで答えて。それだけでいい。思ってること、言ってくれるだけでいいから」
絢斗の右手に触れて、そっと握る。温かくて、その変わらない温度にきちんと愛おしさを覚える。
彼の左胸に自分の頭を預ければ、心臓の音が確かに聞こえた。
激しい波のように、燃え上がる炎のように、求め合って愛し合う激情はない。ないけれど、いま感じている優しく柔らかい胸の高鳴りを、私は恋と呼ぼうと思う。
そのささやかな喜びを、守っていこうと思う。
「奈々ちゃんは……やっぱり、ずるいよ……」