禁忌は解禁された
「え?井田くんのこと、知ってるの?」
宮原と伊敷を見上げ言った、一颯。

「一颯ちゃんこそ、井田 真絋とどうゆう関係?」
「そうだよ!一颯ちゃんみたいなお嬢様が関わっちゃダメな奴だよ!!」

「え?井田くんは、ウチの組員さんだよ。
私の護衛をしてくれてるの」
「マジかよ…!?」

宮原と伊敷は、心底驚いていた。

「二人は、井田くんとどんな関係なの?」
「姫、こいつ等は高校の同級生です」
「え?そうなの?お友達?」

「は?あり得ません。
姫、行きますよ。志乃さん達が待ってます」
なんとなく、井田の雰囲気が黒く落ちた気がした一颯。
一颯はこれ以上何も言えず、井田に従うのだった。


「じゃあねー!」
「志乃、実子、可奈!ご馳走様!ありがとう!」
「俺まで、ご馳走様でした!」
ホテルのエントランスで別れる、一颯達。

志乃達を見送り、井田に向き直った。

「颯天、まだいるかな?
さっき、暁生くんがここで仕事してるって言ってたんだけど……少しだけでも、会えないかな?」
「そうですね。でも仕事中は、会わない方がいいかと……」
「あ、そうだよね……」
「帰りましょう、姫」

「あれ~?神龍の姫じゃないですかぁー!」
「え?」
そこに、強面の男達が声をかけてきた。

「何ですか?」
すかさず井田が一颯を庇い、前に出る。
一颯も井田のジャケットを握り、背中にしがみついた。

「お前は……井田か!
お前も偉くなったなぁー!お姫様の護衛なんてな!」
「まぁ……二十一歳のガキが組長なんてしてる規格外の組だしなぁー!あり得ねぇだろ!?普通」
「でもよー、実際に組をまわしてるのは、深澤達だろ!」
「そうそう!深澤は、スゲーもんなぁー!
まぁ、あいつの歳でも組長なんてあり得ねぇけど、まだ深澤なら納得だな!」
「なぁ、お姫様!深澤をちょうだいよ!」

「え……」
「いい加減にしろ……!?」
「あ?」
「井田!!お前、俺達にそんな口聞いていいのかよ!?」
「は?お前等は、俺の兄貴じゃねぇし!」
「へぇー、殺るんだ?」
ズッと井田に顔を近づけた、男。

見えないように、男の手にはナイフが握られていた。

「姫の前で、やめろよ」
井田はナイフの刃を握った。
ポタポタ…と井田の手から血が落ちる。

「井田…お前……」
「早く、消えろ……」

「フッ…やっぱ、お前はとんでもない男だな……!」
「は?」
「度胸や非情さに関しては、お前が一番だよ。
ガキの時も、凄かったしなぁ」
「だから、神龍が拾ったんだもんなー」

「一つ、教えといてやる。
“今の”組長をなめない方がいい」
「あ?」

「確かに若すぎて、あり得ねぇが……
あり得ねぇのは、年齢だけだ!
まぁ……若達がバックアップしてるのも確かだが………
お前等も知ってるだろ?
神龍寺 颯天が組長になるのに“誰一人”反対しなかったことを………
あの方程、恐ろしい人間はいねぇよ……!
まぁ…お前等にも、いつかわかる時がくると思うが」

井田は男達に、不気味な笑みを浮かべていた。
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