潔い死に様
「私より不幸な人を見ると殺したくなるの。私より不幸な人がいなくなれば私が一番不幸になれる。そしたらみんな私のこと可哀想って言って同情して、ちやほやしてくれて、そんでもって私のことを助けてくれるわ。でも、私が一番不幸になる日は来ない。私より不幸な人を殺すことはできない。だから私はあの世で一番不幸になることにする。私があなたをここに呼んだのは、私は生きる意味なんてないとか、生きることがつかれたとか、そんな陳腐な理由で死ぬわけじゃないっていうことを伝えたかっただけ。じゃあね。さようなら。私はあの世で元気にやっていくわ。」

そう彼女は一息に僕に告げたあと、この世を去った。実に彼女らしくって、潔い死に様だった。

でもあのとき彼女は泣いていた。ホントはもろくて弱いのに、人前では絶対泣くようなことはしない。そんな彼女が死の間際になって泣いた。

もしかして、彼女は死ぬ事が怖かったのか。死のうと決意してもなお、死ぬことへの覚悟ができなくって、でもどうしても死にたくって、

…だから僕を呼んだのか。僕の前で今から死ぬと言ってしまえば後は本当に死ななくては示しがつかないだろう。だからといって普通行動に移すか。そもそも僕が彼女を引き止めていたらどうなっていただろう。いや、引き止めないと思ったからこそ僕を呼んだのか。
今度こそ僕は彼女らしいと思った。
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