辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
今まで、周りには貴族のきらびやかな女性が列をなし、強い香料をまとった女性に嫌気がさしていた。

作り笑いにも慣れ、いつしか「王子」という肩書きだけで生きてきた。
俺にとって今回のことは、一生に一度あるかないかのかけがえのない時間だ。

もちろんこの瘴気の問題を解決することが、一番の使命だ。しかし……。

眠る彼女を見下ろしながら、俺の中で少しだけ自由を感じたい、そんな思いが沸いてしまう。

咄嗟に商人と名乗った。彼女はそれを疑ってはいないだろう。

それに彼女が作る薬草は完璧だ。それがあれば万が一何かあった時にも対応できる。

言い訳のように俺はつぶやくと、そっと彼女の横に滑り込む。
もちろん、よこしまなことなど考えていない。
ただ彼女のぬくもりを感じたい。そう思い、俺は隣に感じる気配とともにもう一度眠りについた。
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