辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
もしかしたら婚約をしたことで、私が彼の身分に気づき、何かを話すのではないか、そう思案してあの二年前の情事を口止めに来たのかもしれない。

その可能性に気づき、私は心がギュッと握りつぶされたように苦しくなる。
それならば、私は絶対に話すことはしない。そう約束をして、すぐにでもこの場を去らなければ。

アンネのことを知られなければそれでいいのだから、そう思い私はコレットさんを見た。

「あの、殿下は今日はどちらに? 助けていただいたお礼を申し上げたいのですが」
このまま顔を見ずに去りたい気持ちの方が大きいが、またあの家に来られても困る。

「昨日から一週間、また視察に森に行っておられます」
「え……」
その答えに、呆然としてしまう。あと一週間は彼に会えないということだ。

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