辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
あのままにすることもできたが、フェリーネが倒れたことで泣きじゃくる娘。
「父親は?」
そう尋ねても、娘は「おかーたま」それしか言わない。

どうすることもできず、フェリーネを連れて戻り、とりあえず体調が戻るまで戻すな、とコレットに言い伝えてこの地に来た。

今まで、自分の城に帰ることがこれほど怖いと思ったことはない。
フェリーネがいないことを望んでいるのか、まだあの城にいて再会することを望んでいるのか。

あの日、フェリーネに会いに行った自分の行動の意味もきちんと説明できない。
フェリーネが結婚した男を本当に見たかったのだろうか。
幸せな姿を一目見れば、彼女を諦められるのだろうか。

冷静、いや冷徹と恐れられた俺が、こんなに心を乱されたのは生まれてこのかた初めてだ。

もうすぐ城が見えてくるはずだ。きっと俺の命に背いて、フェリーネを元いた場所に戻す者はいないと思う。

フェリーネは夫の元へ返せと泣き暮らしているのだろうか。

その姿を思って、俺の胸はギュッと締め付けられた。

どれだけたくさんの令嬢がいようとも、こんなに苛立たされて、気持ちをかき乱すのはフェリーネただ一人だという事実。

王子としての責務だけを考えなければいけないのに。
俺の目の前で倒れた真っ白い顔のフェリーネの表情、抱きとめた細い身体の熱が今でも手に残っている。
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