嘘よりも真実よりも
*
「ありがとう、助かったよ」
革の手帳を受け取ると、仁志さんは安堵の息をついた。
安堵するのは、私の方。47階に到着したものの、すぐに仁志さんを見つけられるか不安だったけれど、連絡を受けていた秘書に誘導されて、すんなりと彼の部屋に通された。
「珍しいですね、忘れ物されるなんて」
「ちょっとね、動揺してしまったかな」
仁志さんは困り顔で笑うと、私を案じるような目で見つめてくる。
動揺した理由も、私を心配する理由もすぐに察したけれど、首を横にふる。私は、彼ほど何も動揺してない。
「そう。大丈夫ならいいんだ。……ああ、そうだ。みちる、週末は空いてる?」
「はい。ずっと家にいる予定です」
「それはよかった。土曜日の夜、パーティーがあるんだけどね、みちるも来るといいよ」
「パーティーですか?」
思わず、目を見開いて驚いてしまう。
これまで何度となくパーティーに出かける仁志さんを見かけたけれど、誘われたのは初めてだった。
人見知りの私がパーティーで楽しめないことは彼も承知だったし、できる限り、日の当たらない生活をさせてくれていた。
私が翻訳の仕事をしているのも、ほとんど家で仕事ができるからだし、極力知らない人と会わずに生活できるからだった。
「ありがとう、助かったよ」
革の手帳を受け取ると、仁志さんは安堵の息をついた。
安堵するのは、私の方。47階に到着したものの、すぐに仁志さんを見つけられるか不安だったけれど、連絡を受けていた秘書に誘導されて、すんなりと彼の部屋に通された。
「珍しいですね、忘れ物されるなんて」
「ちょっとね、動揺してしまったかな」
仁志さんは困り顔で笑うと、私を案じるような目で見つめてくる。
動揺した理由も、私を心配する理由もすぐに察したけれど、首を横にふる。私は、彼ほど何も動揺してない。
「そう。大丈夫ならいいんだ。……ああ、そうだ。みちる、週末は空いてる?」
「はい。ずっと家にいる予定です」
「それはよかった。土曜日の夜、パーティーがあるんだけどね、みちるも来るといいよ」
「パーティーですか?」
思わず、目を見開いて驚いてしまう。
これまで何度となくパーティーに出かける仁志さんを見かけたけれど、誘われたのは初めてだった。
人見知りの私がパーティーで楽しめないことは彼も承知だったし、できる限り、日の当たらない生活をさせてくれていた。
私が翻訳の仕事をしているのも、ほとんど家で仕事ができるからだし、極力知らない人と会わずに生活できるからだった。