嘘よりも真実よりも
 彼らに続いて、中へ入る。すでにパーティーは始まっていた。ワインを片手に、紳士淑女は各々に談笑し、立食パーティーを楽しんでいる。

 彼らのきらびやかさに圧倒されながら、さらに中へ進む。胸の前でキュッとこぶしを握ると、緊張が伝わったのか、清貴さんが小さく笑った。

「いい男がいたら、声かけていいよ。そうだ。名刺でももらっておくといい。みちるにつり合う男か、俺が調べるから」
「私につり合う方なんて、ここにいらっしゃるとは思えません」
「みちるは卑下しすぎだよ。ほらもう、みちるに視線が集まってる。俺がいるから簡単には近づいてこないと思うけどね」
「離れないでくださいね」

 周りをじっくり見る余裕はないまま、清貴さんに寄り添う。

「なるべくそうするよ」

 臆病だなぁ、なんて彼は笑いながら、ワイングラスを差し出してくれる。あまりお酒は飲まないけれど、乾く喉を潤すようにグラスを傾ける。

 口の中に広がる苦味をこくんと喉に落とした時、少し離れた場所からこちらを見ている青年に気づいた。

 アッと声を上げそうになって、すぐに口をつぐんだ。

 その青年には見覚えがあった。どこにいても目を惹く美しい人だからこそ、余計に記憶は鮮明だったのだと思う。

 金城総司さんだろう、彼は。絶対に、そう。私にじっと注がれる視線がなかなか離れなくて落ち着かない。

 すぐに目をそらしたけど、緊張したからか、ワインをどんどん飲み進めてしまう。最後の一滴の渋みが喉の奥へと流れ落ちていくと、じわっと身体が熱くなる。

「みちるはほんとに弱いなぁ。あっという間に赤いよ」
「もう?」

 ほおに手のひらをあてる。ほんのり熱い。真っ赤かもしれない。

「別の飲み物にしよう。おいで」
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