嘘よりも真実よりも
 会場の入り口まで送ってもらい、大きなドアを抜け出る。ドアが閉じると、喧騒が消えた。

 ホッと肩の力が抜ける。やっぱり、パーティーは慣れそうにない。はやく帰ろう。

 静かな廊下を進み、先にあるエレベーターに乗り込むと、「待って」と青年が中へ飛び込んできた。

「あっ」

 今度は遠慮なしに声を上げていた。金城総司さんだった。

「やっぱり、あなたでしたか。いえ、見間違えるはずなんてないんですが」

 なぜか照れくさそうにする彼に、ゆっくりと頭を下げる。

「先日はありがとうございました。金城さんもお帰りですか?」
「あなたとお話がしたくて追いかけてしまいました。少し時間ありますか?」
「えっ」

 唐突なお誘いで、酔いがさめてしまう。

「上に雰囲気のいいラウンジがあります。飲み直しませんか」
「でも……」
「ぜひ、お話したいです。少しだけでも時間をください」

 総司さんがエレベーターのボタンを押す。ドアが閉まるとともに、エレベーターは上昇し始める。

 どうしよう。迷う余地なんてなくて、はやく帰りたいって思ってるのに、彼を止められない。

 男性に強引にされた経験なんてないし、こういう時は気がなくてもお誘いに乗るものなんだろうかと考えてもいる。

 良い人そうな総司さんだから、少しぐらいお話してもいいかもしれない。そう思ってる私もいて、戸惑っている。

 ちょっとした好奇心が、彼に対する好意かどうかも判断できないまま、ラウンジへと到着した。
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