ひねくれた純愛 アイリスとカーライル
俺は携帯を手に、にこやかに微笑んだ。
教授は額にしわを寄せて、
俺をにらんだ。
「何の取引だっ?」

「お疲れの時は
いつでも俺が膝枕しますので、
言っていただければ・・・」

「・・脅迫か?」
教授は俺を睨みつけたまま、
猫が威嚇するように、肩に力が入った。

「眠っている時は、かわいらしいですね」
俺は感想を述べた。

「この件は・・・今は保留だ。
いいな。あとで話をつける」
教授はやや苦しそうに、
俺を眼鏡越しに、再度にらんだ。

可愛らしいピンク色の頬で睨まれても、効果がない。
そう言ってやりたかったけれど、
俺は無言でうなずいた。

この件で貸し1個。

教授は、俺が持つはずの重い鞄を持って、コートも着ないで、
ホームから走って逃げて行った。

その後ろ姿を見て、俺は笑ってしまった。
狩人から逃げる、ウサギのようだったからだ。
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