クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 屋敷の厩に馬を繋ぐと、しんと静まり返ったその中へと足を忍ばせる。ぎぎっという扉の重々しい音が、異常に大きく聞こえた。
 カツン、カツン、と響く自分の足音。住み慣れた屋敷であるはずなのに、一月半も不在にしていたのであれば、懐かしいという思いも込み上げてくる。そのまま、執務室へと足を向けた。

 上着を脱いで、執務席へ腰を落ち着けると、大きくため息をつく。そのため息で吹き飛ばない程の量の書類が、その机の上には積み上げられていた。ティメルが口にしていたようにその書類の束が約十。
 だが、その束の前にメモがあることに気付く。押印、返信要、返信不要、と、一言ずつ書いてあるメモ。
 押印に分類されている束の一番上の書類を手にして、目を通す。どうやらこれは内容を確認した後、押印する必要がある書類のようだ。他のものは、とそれぞれの束の一番上から書類を手にして、それぞれに目を通す。
 誰かが仕分けをしてくれたようだ。その誰かに心当たりはあるのだが、心当たりのある人物といったら、残念なことにティメルしか思い浮かばない。つまり、優秀な部下は本当に優秀だったようだ。

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