クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 デーセオは迷った。いつもならその執務席の方に座るのだが、今、そこに座っては彼女と座る位置が離れてしまう。となれば、座る場所はその前に置いてあるソファ席だ。
 レーニスが手際よくお茶の準備をする。お前の分も淹れろ、とデーセオが口にすると、くりくりっと目を大きく広げてニコリと笑う。

 デーセオの心臓は恋する乙女のように高鳴っていて、爆発寸前だった。

 この呪われた顔を見せたら、彼女に嫌われてしまうのではないかとずっと不安だった。それでも彼女を手元に置いておきたいと思っていた。解呪のために金で手に入れた元聖女候補だったのに、いつの間にか惹かれていた。いつ惹かれたのかなんてわからない。いや、一目見た時だ。彼女がこの屋敷に来て、会った瞬間に惹かれた。
 彼女の境遇に同情していたのかもしれない。絆されたのかもしれない。それでも自分の意思で彼女を自分のものにしたいと思って、抱いた。
 全ては彼女に惹かれたから。だからこそ、嫌われたくなかった。

< 156 / 318 >

この作品をシェア

pagetop