クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「いえ。せっかく、この家にお世話になるのですから。自分でやってみたいのです」

「そう?」
 ロイスは頬に手を添えて言う。
「あなたの部屋の隣の小さな物置にあるわよ」

 それだけ教えてもらえれば充分だ。

「ありがとうございます」
 すっと立ち上がると、レーニスはその仮面だらけの部屋を出た。

 扉越しに、ルーカスの笑い声が聞こえてくる。
 バカな女だ、売られることもしらないで、と。

 そうか、私は売られるのか。と、レーニスは思った。だけど、その売り先が見つかるまではこの屋敷にいなくてはならない。少しでもあそこで快適に過ごせるようにと、掃除用具を手にした。
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