クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 だが神殿は拒めなかったのだろう。いや、拒みたくなかったのだ。金を詰んでレーニスの祈りを希望する禿エロ親父たちを。だから、あのパエーズ卿なんかはレーニスに会うことを目的に三日に一度神殿を訪れていたのだ。
 聖女様が国の平穏と民たちの幸せのために祈りを捧げるのではなく、神殿に金を落とすために祈りを捧げていたという事実。
 それがいつからかはわからない。レーニスが神殿に足を踏み入れた時からそうだったのだから。

 それでも聖女に救いや心の拠り所を求める民たちは多い。誰だって悩むし、気持ちが沈むときがある。だからこそ、背中を押して欲しい時はあるし、静かに寄り添って欲しい時もある。誰だって、のはずが、いつの間にか金持ちのみ聖女に救われるようになっていただけ。
 だからこそレーニスは、お金の無い民たちにもわずかでありながらも祈りを捧げていた。そうやって背中を押された民たちは、新たな生きがいを見つけ、自分の足で立ち上がろうとする。

 ――腐りきった神殿から膿を出し切りたい。

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