クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 あの神殿がどう動くか。サライトの騎士が船で海から攻めてくる姿を目にしたら、どうするのかが見物だ。聖女に力を使わせるのか、それとも神官たちは彼女たちを置いて逃げるか。いや、聖女たちを囮につかって逃げる、という最も腐ったような方法をとるかもしれない。

「それから。マーサ殿に紹介された元聖女候補たちも、すでに王都に集まっております」
 聖女候補を解かれた女性たちは、昔からの馴染の元へ嫁いだ者もいたし、金持ち親父の元に嫁いだ者もいたし、すでに夫は寿命を迎え気ままな未亡人よと明るく笑っている者もいた。ただ、彼女たちの共通点は「聖女候補を解かれたときは絶望したけれど、今は幸せ」ということ。
 その話を聞いたティメルは、つい、レーニスのことを考えてしまった。彼女がデーセオの元に嫁いできたことは、運が良かったのかもしれない。もう少しあの情報を耳にすることが遅かったのであれば、今頃彼女は禿エロ親父の餌食になっていただろうし、クレイデル王国はサライトの侵略について気付かなかっただろう。
 何しろレーニスがここにこなければ、デーセオが北の砦にまで逃げるという発想にまではいたらなかったのだから。
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