クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
 藁にもすがる思い、というのはこのような気持ちを指すのだろうか。

「では、それを頼む」

 仕方なく、デーセオはそう言った。できるだけ、この呪いによって殺されるまでの時間を稼がなければならないという思いがあった。
 それと同時に、レーニスを探し出して、呪いを解いてもらおうという思いもあった。
 だが、レーニスは聖なる力を失ったらしい。それでもデーセオにとっては、彼女は微かな希望に違いはないのだ。

 それに、失ったものであれば、取り戻せばいいだけだ。
 常にそう考えているデーセオ。だから、まずはレーニスを取り戻し、彼女の聖なる力を取り戻してやる。
 それができなければ、あの隣国の魔術師を殺す。

 シニスの祈りを受けながら、デーセオはそう思っていた。
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