クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
「鱗の色が変わっていないか?」
 ティメルの指摘に竜騎士も目を凝らす。そう言われると、この飛竜はもともと青い鱗で覆われているはずなのに、その色が少し薄くなっているようにも見える。
「いつからこのような調子であるのか、わかるか?」

 昨日はデーセオの結婚式で、この領地の全てが浮かれていた。自分もその浮かれていた人間の一人なのだから、それは認める。だが、飛竜たちは普段と変わらずここにいた。飛竜舎の番たちも、昨日の祝いムードの中、交代でその任務についていたはずだが。
 隣国の仕業か、とティメルは一瞬考えた。浮かれた隙をついて、この飛竜舎に忍び込んだのか、と。
 いや、それはない。隣国が攻め入ってくるのであれば、あの北の砦を突破してくる必要がある。集団でなくても暗殺者のような個人であったとしても、あの砦を超えずに来ることは不可能だ。北の砦からは不審者の情報は上がってきていない。
 となると。
 病気、だろうか。だが、優秀な魔術師であるティメルでさえ、その原因に心当たりは無かった。
 となると、心当たりがもう一人。こういった病の症状に詳しいような人間がいる。

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