クビになった聖女ですが、嫁ぎ先で真の力が目覚めたので第二の人生は幸せです なぜか辺境竜騎士様の溺愛が止まらないのですが!
飛竜の不調
 レーニスは朝から忙しなく動いていた。デーセオが不在であるにも関わらず、いや、彼が不在だからなのか。
 食事を終えれば、この領地について知って欲しいということで執事のジョナサンが講師としていろいろと薀蓄を垂れ流す。薀蓄と思っているのは、昔からのジョナサンを知っている人物だけであって、当のレーニスは彼の話を面白そうに聞いていた。だからジョナサンが余計に調子づく。それが終わると、ダンスやらマナーやら、と。そういえば十五までは両親の元で暮らしていたレーニス。なんとか、そういったことを思い出せるようになっていた。聖女候補のレーニスではなく、令嬢としてのレーニスを。すっかりと聖女候補としての生活に染め上げられてしまっていたけれど、記憶を掘り起こせばなんとかできるものらしい。
 ダンスの先生も、初めてのわりにはお上手ですわね、なんて言っていたが初めてではないからだ。だが、本当に数年ぶりにそういった本格的なレッスンにレーニスはぐったりとしてしまっていた。
 だからサロンで一人、お茶をいただいていたところ、ティメルが現れたことには驚いた。

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