偽装結婚の行く末



まずい、このままだとあっという間に噂が広まる。
その前に“あの男”に言いたいことがあったのに。


「佐久間、ちょっといい?」


週明けの昼休み、ちょうど良いところに社内の休憩スペースの自販機の前でその男を発見した。
あたしが話したかった男はそう──あたしがフッたクズ男の佐久間。


「何?」


久々に話しかけたから佐久間も驚いてあたしを凝視する。
あたしから話しかけたの、ビンタして以来初めてだもんね。


「ちょっとこっち来て、早く」

「……えー、何?俺またビンタされんの?」

「ビンタされるような心当たりでもあるわけ?」

「今のところない」


あれ、案外ちゃんと受け答えするじゃん。
強烈なビンタを浴びせた件は忘れてなかったみたいだけど、普通に話せてあたしもびっくり。

あたしは誰もいない休憩スペースに佐久間を連れてきて正面から言ってやった。


「あたし、結婚することになったんだ」
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