偽装結婚の行く末
初めての経験だった。
言葉を理解した途端、涙があふれるなんて。

こぼれた涙は頬を伝っていく。
昴はそれを指先で拭うと、意地悪な笑顔に変わった。


「あーあ、泣いてどうすんだよ。メイク崩れるぞ」

「誰が泣かせたと思ってんのよ」

「……かわいい」


意地悪な顔を浮かべたくせに、我慢できないって感じで唇を寄せてきた。
唇を合わせるだけのキスなのに、これまでで1番甘いキス。


「ほら、早く泣きやめ。今度はお母さんたち来るから」

「……無理、いじわる」


涙が止まらないあたしを見て、昴はいつも通り笑う。
そうだった、この後家族とのファーストミートがあったのに泣いてる場合じゃない。

あたしは手で目元の涙を拭いて笑って見せた。
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