偽装結婚の行く末
「社長、おはようございます」

「おはようございます、宮古(みやこ)社長」


菜々美の優雅なお辞儀に合わせて立ち上がって頭を下げる。

一見どこにでも居そうな優しい顔の初老の男性。
こう見えて一代で財を成したすごい人だ。若い頃から超敏腕らしい。

社長は私たちに笑顔で挨拶してなぜかこっちに向かってきた。
えぇっ、何でこっちに?もしかして私語がうるさかった?


「新しい鑑賞魚を買ったんだ」

「え……わぁ〜綺麗ですね!」


と思ったら違った。
持ってた発泡スチロールを開けて水がいっぱい入ったビニール袋を持ち上げてあたしたちに見せる。
なぁんだ、魚を見せたかったのね。

インテリアの会社なだけあって外観にはこだわってる。
エントランスにあるアクアリウムもその一環らしい。


「ハタタテハゼって言ってね、グラデーションが綺麗なんだよ」

「へぇ……また賑やかになりますね」

「そうだね、さっそく入れてあげようかな」


そう言って社長は水槽に近づいていく。
あー、今はやめてほしい。
そんなことより来客があるから早く社長室に行ってくれなんて言えない。


「あ、あの……社長すみません」

「社長、私がお持ちします。白井さんは持ち場に戻ってください」


仕方なく、恐る恐る社長の後ろ姿に声をかけたその時だった。
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