偽装結婚の行く末
片手にバケツや網を持つ、ひっつめ髪で地味な見た目の社員がひとり。
総務の遠藤さんだ。
佐久間にビンタした所を目撃されたからこの人ともちょっと気まずい……。


「遠藤さん、よかった探してたよ」

「はい、昨日の件ですね。準備はバッチリです」


でも助かった〜!総務の遠藤さんはバリバリ仕事ができることで有名だから社長も気を悪くしないはず。
その証拠にバケツを掲げる彼女に社長は「さすがだねぇ」と満足げ。


「遠藤さん、ありがとうございます」

「いえ、お気遣いなく」


そっと話しかけたらクールに返答された。
はは、この人もブレないな。

遠藤さんは心先輩の同期。
無愛想だけど人一倍仕事ができる人だって知ってる。
しかもすっごい気が利くし実は優しい。


「臆病な魚だからビックリするとすごい勢いで外に飛び出すらしいよ」

「でしたら上に網を張って置きましょうか」

「うん、それがいいね」

「ここは任せてください。それより社長、本日10時より来客のご予定と聞きましたが?」

「ああ、そうだったね。思い出させてくれてありがとう」


ただの総務なのにしっかり社長の予定まで入っててすごい。
水槽の管理とか業務外の仕事なのに嫌な顔ひとつしないし。
尊敬する、あたしは絶対無理。
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