偽装結婚の行く末
あー、もう。ムシャクシャする。
昴だってあたし並に猫被ってんのに、母さん全然気が付かないし。


「あーあ、律といろいろ話したかったのに」


どんなに頑張っても奥村昴という障壁がある限り私は報われない。
勉強はもちろんのこと、友達だって恋愛だって、昴のせいでうまくいかなかった。

それなのに昴はいつだって涼しい顔で……あー、思い出したら腹が立つ。


「律まで盗られたらどうしよう……」


8歳までどこにいっても『昴の幼なじみ』って目で見られて窮屈な思いをして生きてきた。
だけど律が生まれてからは『律の姉ちゃん』と呼ばれるようになった。

いつだって味方をしてくれた律。人一倍愛嬌があって運動神経抜群で小さい頃から人気者だった。
さらにバスケで才能を開花させて、地元で一躍有名人に。
だから律の姉ちゃんって呼ばれるのは誇らしくて嬉しかった。

それでも昴の影響力は絶大で。
特に母さんは体裁を気にするタイプだから、よその子と自分の子を比べたがる人だった。
幼なじみの昴は頭脳明晰で運動神経も抜群、絵に書いたような優等生でよく引き合いに出してきた。


「あんたさぁ、もう少し昴くん見習ったらどう?」


幼少期から耳にタコができるくらい聞いた母さんの口癖。
高3の夏休み、あたしは我慢できなくて反論した。
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