偽装結婚の行く末
「予約していた奥村ですが」


予約していたホテルに着いた昴は、お得意の愛想笑いで受付のお姉さんに話しかける。
顔がいい昴に笑いかけられて、仕事中なのに目を丸くしちゃってる。

まあ、気持ちは分からないこともない。
起業してなかったら俳優とかやってそうだなと思うくらい容姿端麗だし。


「……奥村って書いた方がいい?
あ、いや婚約者だから別にいいか。なんでもない」


荷物を預ける前に、宿泊者の個人情報を書き込む用紙をひとりずつ渡された。
隣で書いていた昴にこそっと聞いたら笑われた。


「すっかり俺の婚約者役が板についてきたよな」

「女はみんな役者だから」

「俺には演技しないくせに?」

「いいから早く書いてよ」


肘でちょい、とつつかれて怪訝な顔をする。
だけど昴は片方の口の端を上げてご機嫌。

出た、ほんと人にちょっかけかけるの好きだな。
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