偽装結婚の行く末
「でも産んでもらった恩と、あたしをここまで育ててくれた恩がある。
昴ばっかり気にかけるのは未だに癪に障るけど」

「だって、美優の小さい頃の夢を叶えたいと思って」


隣に座る昴を肘でつつく。だけど母さんの言葉に動きを止めた。


「あたしの夢って何?」

「美優、昴くんと結婚したいって言ってたの覚えてないの?」

「覚えてるわけないじゃん!いつの話!?」

「いつだっけ……律が生まれる前かも」


母さん、あたしと昴をくっつけたいからって昴を特別扱いしてたの?
そんなこと知ったら昴がますます調子に乗る……!
ほら、ずいっと顔を近づけてきた。


「ほーん、そんなに前から俺のこと好きかよ。
もっと早く嫁にもらってやればよかったな」

「覚えてない!昔の話だから!」


家族の前でいじるな!恥ずかしいじゃんか。
至近距離で笑う昴の顔をぐいぐい押しやる。


「口うるさいことばっかり言って今までごめんなさい。
でもこれだけ言わせて。幸せになってね、美優」

「やだ……照れくさいからやめてよ母さん!」


母さんの本音を聞いたのは初めてだった。
ずっと知らなくていいと思ってたけど、そんな風に考えてたなんて。
ほんの少し歩み寄れた気がして胸がすく思いがした。
律はその横でずっと笑ってた。
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