夢路の途中で
ゆらゆら燃える青い炎(ほむら)。



夜の帳(とばり)が降りた世界に続く道中を照らすのは、蒼鬼(そうき)のつくりだした幻想だから、熱くはない。



彼とは学園で出逢った。



満開の桜並木の中蒼夜色の瞳と視線が合った時、言いようの無い感情を抱いたのを今でもよく覚えてる。現の美しさとは違う種の美しさ――それは春の名花にも決して劣らないものだった。


“夢路の蝶”を追って学園へたどり着いた彼は、明星夜鷹(みょうじょうよだか)としてこの学園都市で探っている。



夢のように儚く彷徨い、もし突き止められたとしてもそれは何事も無かったかのように、すぐたち消えてしまう幻想のようなものだと彼は言う。



“誰かと入れ替わった”



現に降りて、探りそして夢路へ送還するのが、この世界での役目だと淡々と言った。




夢路――立ち入る事を許され学園以外で、唯一彼と逢える場所。彼の故郷でもあるのだが、いつ来ても寂しい場所だ。虚空を見つめていた瞳が、こちらに向けられる。


「迷わなかったか」

「うん。ごめんね友達に呼び止められちゃって、遅くなっちゃった」

「構わない。人にとっては大切なんだろう、友というのは」


この空間は時に迷わすらしい。単なる悪戯好きなのか定かじゃないが、数多の意思が存在するらしい。“夢路の蝶”もその一つなのだそうだ。


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