僕らは運命の意味を探していた。

アツ

 二日後の夢の中。

 僕は畑ケ野敦。

 今さっき、この不気味なワールドに降り立った亡霊だ。

 外側から見た感じ、黒くておどろおどろしい球体が浮かんでいるかと思いきや、中に入ってみるとなんとも美しい光景が広がっていて、僕は心底驚いた。

 どうして、僕がここにいるかって?

 それはね、お墓にとある親友が来てくれたから。

 そこで色々教えてくれたのだ。真道たちがこの生死の狭間に来ていると。

 一見、夢のような世界観だが、実際ここは生と死の狭間。

 そこに危険な匂いが漂い、『大量の生命力』を使って創り出した、何とも悍ましい世界があったのだ。

 「何言ってんだ、このバカ。」

 そんな、罵倒の声が聞こえてきそうな僕の説明だけど、本質を言うとまさにそのまま。

 どんな手段を使ってこの世界に、生きている人間を連れて来たかは分からないけど、創り上げた人は相当な覚悟を持って行ったと、僕は思った。

 なぜなら、ほとんど自分の命と引き換えにするようなものだから。おそらく創造主のリミットが近いはずだ。

 まあ、何となく犯人の目星も、外側から入る時に感じた感情の一部を見て、犯人の動機も分かってはいるけどね・・・・・・。

 飛ぶという手段もあるけど、こんな素敵な光景を見せつけられて、鑑賞しないのはもったいない。

 とりあえず、犯人を見つけるまでこの風景を満喫しよう。

 僕が下りたのは、どうやらどこかの森の中らしい。僕の後ろには、視覚で捉えられないようにカモフラージュされている障壁があった。

 中の気温は、真夏の気温と一緒くらいだ。まだ森の中で日影が多いお陰で、過ごしやすくはなっている。

 でも聞いたところによると、僕の親友達は二週間以上、この空間に監禁されている。それを考えると、過酷な生活を強いられているはずだ。

 歩いて行くと、森から抜ける道が見えた。

 出てみるとそこは大通りで、この世界が一望できるような場所だった。

 ふと、どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてくる。親友の聞き馴染んだ声。

 それが耳に入ってくるだけで、何かが込み上げてくるような感覚を覚えた。

 恐らく真向かいにある、年季の入った校舎の方から聞こえてくるものだろう。声色的には穏やかで、何か日常会話を交わしているような雰囲気だった。

 良かった。早めに片が付きそうだ。

 長居する事になれば、こんな日光のキツイ場所に、何日も居続けなければいけない。流石にそれは過酷すぎる。

 僕は少し足早になりながら、声の方向に歩みを進めた。

 昇降口から中に入ってみても、閑散としていて屋上からの声しか聞こえてこない。

 やはり二週間以上いるだけあって、蜘蛛の巣や埃は少なかった。恐らく親友達の基地はここなのだろう。

 日陰もあって雨も凌げて、この世界の中心部に位置しているから、かなり利便性には富んでいると思う。

 とりあえず階段を上ってみるしかない。

 どうだろう。絶対びっくりするよね。久々に言葉を交わす訳だし。

 まず何でここにいるのか、って疑問の解決からだしね。

 楽しみだな、真道の驚く顔。腰ぬかすよね、もう立ってられないだろうな。

 そんなワクワクした気持ちと不安感が入り混じっていた。

 僕は階段を昇りきり、金属製の屋上に通ずる扉を開いた。

「二人とも、そんなに呆気に取られた顔してどうしたんだよ。」

「何でお前がここに…………。アツ……。」

 僕は、真道が思い通りの反応を見せたことに、少し安堵した。
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