僕らは運命の意味を探していた。
 どんな表情で僕を見ているのか、僕には知る由もなかった。

 しかし彼女の涙交じりの声だけは、しっかり僕の耳に届いていた。


 はい。お願いします。


 右手に暖かな感触があった。

 それは世界で一番優しさに溢れた握手だった。

「ありがとう、あき。僕にもう一度チャンスをくれて。」

「ううん……。二回でも三回でも、何回でも挑戦してね……。私は君が変わった瞬間が見れれば、それで嬉しいから……。」

『僕の彼女』は涙が収まらない様子で、僕にそう言ってくれた。

 寛大な彼女に、僕は改めて自分の感情を確認させられた。

 そして僕は、変化なし、という結論に至ったのだ。

「何で泣いてるんだよ。」

「だって……小学校の時からずっと好きだったんだもん……。嬉しいんだよ……やっと初恋の人と一緒になれて……。」

「なんか僕、特別なことしたっけ?」

「別に特別な事なんて、何も無いよ……。ただ一緒にいる時間が楽しくて……マー君の優しい部分がたくさん見れて……。そんな日々を過ごしている中で……気が付くと君を好きな自分がいたの……。」

 僕らが小学生の時は、毎日のように二人で遊んでいた。

 互いに友達はいたが、何となく二人の空間が心地よかった。

 感情に素直な時期だったから、その気持ちを抱いていた結果、二人っきりで遊ぶ機会が多くなっていた。

「僕はね、あきの全部が好きだよ。」

 あきのようにまとめられる自信が無くて、僕は漠然とした言い方になってしまった。

 だから、ストレートに思ったままを伝えた。

「例えば……。」

「皆に優しいとことか、たまに抜けてるとことか、僕と一緒にいてくれるとことか、綺麗な黒い髪とか、……。」

「も、もういいよ……。分かったから、聞いた私が悪かったから……。」

 あきは照れながら、僕の口を押えた。僕は、彼女のそんな顔も愛おしく感じていた。

 まだまだ、長年傍で見てきた幼馴染の良いところはいっぱいあった。僕にとっては、圧倒的な列挙不足だった。

「でも一番好きなのは、あきの笑顔だよ。」

「…………ッ‼ もういいって…………。」

「ほんとの事しか言ってないからな。僕はあきの笑った顔が、大好きなんだよ。」

 僕は彼女の目を見て、羞恥心をひた隠しにしながら言った。

 その結果、照れたあきは僕の胸に顔を埋めて、真っ赤になった顔を隠してしまった。

「そろそろ屋内に戻るか?」

「……もうちょっと待って。」

 多分真っ赤になった顔を元に戻したいのだろう。

 でもこの暑さじゃ、あきの行動にあまり意味がなかった。

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