僕らは運命の意味を探していた。
 数分間、あきが満足するのを待った。

 僕はその間中、あきの背中に手をまわして抱きしめていた。

 それから、彼女は落ち着いたのか、少し赤みが残ったままの顔で僕に言った。

「……戻ろっか。」

「あ、ああ……。急だな……。」

 僕は急激な展開に、少し驚いた。

 彼女は、僕の元を離れると、隣を歩いた。

「手、繋がないか?」

「う、うん。いいよ。」

 僕は、気恥ずかしさを抱きながら、あきに提案をした。

 やはりこういうのは、男から言うべきだと、僕は思った。

 僕の右手と彼女の左手が、幸せな空気を醸し出していた。

 二人の胸の動悸は最高潮に達し、同時に幸福感で満たされていた。

 そのまま僕らは、屈託のない笑顔を浮かべながら、皆の元へ戻っていった。

 僕は階段をゆっくりと降りながら、晴れやかに輝く青空に向かって思いっきり叫んだ。

「二人とも、安らかに眠れー‼︎」

 この想いが誰かの心に運ばれることは、雲を掴む可能性よりも低い。それは分かりきっていた。

 それでもなお、声を届けたくなったのは、心の片隅で二人の存在を願っていたからなのかもしれない。

 叫んだ後僕は、余韻に浸った。目を瞑りながら顔を上げ、自然の音に耳を澄ませていた。

 その時、どこからともなく快い風が吹き抜けたのを感じた。僕は感慨深い気分になった。

「なあ、あき。」

「ん? どうしたの?」

 あきは少し笑みを浮かべながら、そう言った。

 僕は、あきのそんな顔を見て、反射的に体が動いていた。

 僕はキスをした。

「……っ!」

 あきは、驚いたような表情を浮かべていた。

 恐らく晴天の霹靂だったのだろう。

 僕は自発的に、こういう事をするタイプでは無かったから、驚きを隠せない様子だった。

 しかし、あきはすぐに受け入れて、僕の愛情を受け取ってくれた。

 しかも今度はあきから僕に向けて、気持ちを送り届けてくれた。

 僕はこのやり取りが、最高に幸せだった。

 そして僕らは、唇を離した。

 お互いの顔は真っ赤に染まり、熱中症を疑うほどだった。

「……マー君って、こういう事するタイプだったんだね。」

「あきの前だけだからね、こんな僕を見せるのは……。」

 僕は照れ隠しでそういった。

「そっか。じゃあ私からも……。」

「……っ!」

 再び僕らの唇は繋がった。

 今度はあきから、仕返しのようにキスをしてきた。

「これでお互い様だね。」

「ああ。そうだな。」

 僕は平静を装いながらそう言ったが、あきの唇の感触が忘れられずにいた。

 柔らかく滑らかで、何度もキスをしたくなるようなものだった。

 僕らはまた手を取り合って歩き始めた。

 僕はもう一人じゃ無い。

 みんなが居てくれる。

 そう思えるようになって、僕は幾分心が軽くなった。

 怖いものはもう無い。

 二人の分まで人生を楽しもうじゃないか。

 僕は後ろを振り返る事なく、快い追い風を感じながら、明るい未来に向かって歩き出した。
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