僕らは運命の意味を探していた。
僕は紗南の気迫に圧倒されて、何も言い返せないでいた。しかし、僕にだって言いたい事は山ほどあった。
「僕自身のためにやった事? 欲求を満たすためだけにやった事? 笑わせんなよ‼ そんなんで僕がここまでの事出来ると思ってんのか?」
「出来んじゃねえのか? 自分の欲を満たすためなら、人間なんだって出来るからな‼」
「ああ。僕はもう死ぬだけだからな。別になんだっていいんだよ。」
さっきまでの勢いを殺して、僕は平然とそう告げた。張り合うのも馬鹿らしいとすら思った。
「私は、その考えが一番気に食わねえんだよ‼ 私たちのために死ぬ? 自殺の理由に勝手に組み込んでんじゃねえよ‼ そんな事されたって、誰が喜ぶんだよ。」
勢いに乗った紗南は怒鳴り続けた。
「あきを死なせて、やさぐれてるのかもしれねえけど、お前が自殺する事で、あきがどう思うとか考えたことあるか?」
「ねえよ。ある訳ないだろそんなの。」
「じゃあ考えてみろよ。あいつがどう思うのかって。」
これから紗南が始めようとしているのは、綺麗事の羅列。
そんなものをやさぐれた人間が聞いて、どう思うのか。
そんなもの僕ですら見当が付く。僕はそれに該当はしないが、ただ然るべき事をしたかった。
「何だよそれ。」
そして僕は紗南の両手を振り解いた。
「どうせ、死んで欲しくないとか言い出すんだろ。でもさ、それってお前のエゴだよな。」
「何言ってるんだ…………。お前……。」
「正常だよ僕は。異常なのは君の方なんじゃないか? だってあきは、もう死んだ。それで僕はこの世界に残ってしまった。それは僕が望んだ事じゃない。」
そう、僕は二人で歩む世界を望んだ。一人で歩く世界なんか、もう嫌だから。
「今からあきの元に行くなんて気持ち悪い話はしない。ただ、あきのいない世界が嫌なだけ。だからこの世界からリタイヤしたいんだよ。」
あれだけ勢いのあった紗南も呆気に取られた顔をしている。
「狂ってるよ……。」
「……かもな。」
「お前は、私たちの知る真道じゃない……。」
「紗南が、どんな僕を知っているかは分からないけど、僕は僕だから。」
頭が良くて、頼りになって、優しくて、どこか馬鹿っぽい。そんな僕を想像しているのだろう。
でもそれは赤の他人だ。
「今までの僕も春原真道だし、この僕も春原真道なんだ。紗南は少々夢を見すぎなんじゃないか?」
何も言い返せないでいた紗南に、僕は再び紙を差し出した。
ここまで続けざまにショックを与えれば、大人しく受け取ってくれるだろう。
「だから、早く現実に戻ってくれ。こんな世界に生きてたって、僕は楽しくもなんともないから。」
「……嫌だ。」
「えっ?」
「……嫌だ、絶対に。」
「何で? 何で、こんなどうしようもなく腹が立つ人間に、そこまでできるんだよ。」
涙で顔一面がぐっしょりの紗南は、顔上げて再び真剣な眼差しで僕を見た。そこには確固たる意志があった。
「……嘘、なんでしょ?」
「嘘?」
「嘘なんでしょ? そのキャラ。」
「嘘も何も、正真正銘の春原真道だけど。」
「……そういうキャラを演じていれば、素直に受け取ってくれると思ったんでしょ? あきの事、死ぬほど好きで、死なせたことを死ぬほど後悔してることも本当。でも私たちの事も、好きでしょ?」
僕は黙って下を向く。何かを言葉にした時に、僕の目元からうっかり出てしまいそうだから。
「……好きだから、私たちだけでもって考えたんでしょ? 好きだから、突き放しきれなかったんでしょ? 好きだから、そうやって何も言わないんでしょ? 早く言っちゃおうよ、本音ってやつをさ。」
「何……言ってんだよ……。そんな器用なこと僕に出来るはずが……。」
僕の言葉を遮るようにして紗南は、ぼくを諭すように言った。
「本当に嫌な人なら、自分で『腹が立つ人』なんて言わないしさ。頑張ってキャラ作り上げたのが、もろに出てるから。」
「僕自身のためにやった事? 欲求を満たすためだけにやった事? 笑わせんなよ‼ そんなんで僕がここまでの事出来ると思ってんのか?」
「出来んじゃねえのか? 自分の欲を満たすためなら、人間なんだって出来るからな‼」
「ああ。僕はもう死ぬだけだからな。別になんだっていいんだよ。」
さっきまでの勢いを殺して、僕は平然とそう告げた。張り合うのも馬鹿らしいとすら思った。
「私は、その考えが一番気に食わねえんだよ‼ 私たちのために死ぬ? 自殺の理由に勝手に組み込んでんじゃねえよ‼ そんな事されたって、誰が喜ぶんだよ。」
勢いに乗った紗南は怒鳴り続けた。
「あきを死なせて、やさぐれてるのかもしれねえけど、お前が自殺する事で、あきがどう思うとか考えたことあるか?」
「ねえよ。ある訳ないだろそんなの。」
「じゃあ考えてみろよ。あいつがどう思うのかって。」
これから紗南が始めようとしているのは、綺麗事の羅列。
そんなものをやさぐれた人間が聞いて、どう思うのか。
そんなもの僕ですら見当が付く。僕はそれに該当はしないが、ただ然るべき事をしたかった。
「何だよそれ。」
そして僕は紗南の両手を振り解いた。
「どうせ、死んで欲しくないとか言い出すんだろ。でもさ、それってお前のエゴだよな。」
「何言ってるんだ…………。お前……。」
「正常だよ僕は。異常なのは君の方なんじゃないか? だってあきは、もう死んだ。それで僕はこの世界に残ってしまった。それは僕が望んだ事じゃない。」
そう、僕は二人で歩む世界を望んだ。一人で歩く世界なんか、もう嫌だから。
「今からあきの元に行くなんて気持ち悪い話はしない。ただ、あきのいない世界が嫌なだけ。だからこの世界からリタイヤしたいんだよ。」
あれだけ勢いのあった紗南も呆気に取られた顔をしている。
「狂ってるよ……。」
「……かもな。」
「お前は、私たちの知る真道じゃない……。」
「紗南が、どんな僕を知っているかは分からないけど、僕は僕だから。」
頭が良くて、頼りになって、優しくて、どこか馬鹿っぽい。そんな僕を想像しているのだろう。
でもそれは赤の他人だ。
「今までの僕も春原真道だし、この僕も春原真道なんだ。紗南は少々夢を見すぎなんじゃないか?」
何も言い返せないでいた紗南に、僕は再び紙を差し出した。
ここまで続けざまにショックを与えれば、大人しく受け取ってくれるだろう。
「だから、早く現実に戻ってくれ。こんな世界に生きてたって、僕は楽しくもなんともないから。」
「……嫌だ。」
「えっ?」
「……嫌だ、絶対に。」
「何で? 何で、こんなどうしようもなく腹が立つ人間に、そこまでできるんだよ。」
涙で顔一面がぐっしょりの紗南は、顔上げて再び真剣な眼差しで僕を見た。そこには確固たる意志があった。
「……嘘、なんでしょ?」
「嘘?」
「嘘なんでしょ? そのキャラ。」
「嘘も何も、正真正銘の春原真道だけど。」
「……そういうキャラを演じていれば、素直に受け取ってくれると思ったんでしょ? あきの事、死ぬほど好きで、死なせたことを死ぬほど後悔してることも本当。でも私たちの事も、好きでしょ?」
僕は黙って下を向く。何かを言葉にした時に、僕の目元からうっかり出てしまいそうだから。
「……好きだから、私たちだけでもって考えたんでしょ? 好きだから、突き放しきれなかったんでしょ? 好きだから、そうやって何も言わないんでしょ? 早く言っちゃおうよ、本音ってやつをさ。」
「何……言ってんだよ……。そんな器用なこと僕に出来るはずが……。」
僕の言葉を遮るようにして紗南は、ぼくを諭すように言った。
「本当に嫌な人なら、自分で『腹が立つ人』なんて言わないしさ。頑張ってキャラ作り上げたのが、もろに出てるから。」