内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 正月飾り、椿や梅、最後に桜を飾って終わりだ。

 生花は暑さに弱いから、この場所の飾りつけをうちの店が担当するのは、年末から春までと決まっている。

「ここは寒いから大変だろう?」と、おじさん。

「いえいえ、全然。お店と変わらないですよ。いや、お店の方が寒いかも」

「そうかい花屋も大変だね」

 片づけをしながら警備員のおじさんと話をしていると冷たい風が細く吹き抜けた。

 振り向くと、入り口の自動扉が開いていて、スーツ姿の男性が入ってくるところだった。
 まだ時間は早いのに、仕事が忙しい人なんだろう。

 頭が小さくて、すらりとした見目麗しい背の高い男性である。

 ここ『株式会社シルKU』は誰もが知る有名企業だ。
 一流のビジネスパーソンだけあって、ちょっと近寄りがたい空気をまとっている。

「おはようございます」と警備員のおじさんが言い、私も追いかけるように挨拶をした。

 男性の落ち着いた声で「おはようございます」と挨拶が返ってくる。

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