内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「悠?」

 にっこりとうなずく彼には、懐かしい面影がある。

 ああ、悠だ。

 優しくて勇敢で、彼は私にとって忘れられない恩人であり、大切な人。

「久しぶり、千絵」

 彼の笑顔は一瞬で私を十歳の子どもにした。

「悠!」
 考えるよりも先に私は悠に飛びついていた。

 悠、大好きな悠。
 ずっと会いたかった。

「あはは。変わってないな」

 ポンポンと背中を叩かれて、ハッとする。
 私ったら、オフィスビルのロビーでなんてことを。

 慌てて離れて「えへへ」と笑ってごまかしながら、首を伸ばして周りを見れば。よかった、誰も見ていないようだ。

「ごめんね」
「平気だよ全然」

 いや、まずいでしょと思う反面、うれしくなる。落ち着いた様子に、懐の深さを感じさせる穏やかな笑みは昔とちっとも変わっていない。

 でも外見は違う。
 驚くほど素敵になった。

「悠、すごく変わったね。全然わからなかったよ」

「そう?」

 もっと話したいけれど、ゆっくりはしていられない。こうしている間にも入り口を入ってくる人が見えた。

「千絵、連絡先教えて」
「はいはい」
 スマートホンを取り出して、ひとまず連絡先を交換しあう。

「今晩、会える?」
「うん大丈夫」
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