内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 ある日、膝を抱えてうずくまる私の横で、悠が本を朗読し始めた。
 最初のうちは無視していたけれど、内容に気づき思わず耳を傾けた。悠が読んでいたのは怪談話だったのだ。

 ちらりと見ると、悠は真面目で淡々と読んでいる。
『いちまーい。にまーい』

 なぜ怪談なのか呆れるうちに、ついには笑い出したっけ。

『ぜんぜん怖くないよ』
『そっか、ごめん』

 彼がいなかったら、私はあのとき壊れてしまったと思う。
 辛くて悲しいだけだったはずが、しっかりと楽しかった思い出を胸に刻めたのは悠のおかげだ。

 思い出に浸りながら、しみじみと写真を眺めていると、スマートホンが鳴った。

 弟の(まもる)からの電話である。

「はーい」

『姉ちゃん、食料届いたよサンキュー。早番なの? 留守電かと思ったのに』

「そうだよ、早番」

 弟は大阪でひとり暮らしをして大学に通っている。アルバイトをしながらの苦学生だからちょっと心配だ。

 放っておいたら食事をないがしろにしそうなので、いつも多めに作っている料理を冷凍し、月に二度くらいまとめて送っている。

 ちょっと甘やかしているような気もするけれど、父が亡くなって、弟はたったひとりの家族だ。甘やかしたいし大事にしたい。

「バイト無理してない?」

『うん。大丈夫だよ』

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