内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 止まっていた時計が一瞬のうちに進んだようで、気持ちがついていけないな。

 私が二十五だから、悠はもうすぐ三十歳か。

 知り合ったときの彼はまだ中学生だったから、十五年ぶりの再会になるんだね。

 部屋に入ってすぐ、本棚から懐かしい思い出が残るアルバムを取り出した。

 悠と一緒に撮った写真が一枚だけある。

 見つけた写真の中で、悠は照れくさそうに微笑んでいる。対して私は弾けるような満面の笑み。
 大口開けちゃって、本当にうれしそう。

 この写真は退院した父が、私と弟を施設に迎えにきてくれたときに撮ったもの。

 悠と一緒にいられたのはたった三カ月だけれど、私は悠が大好きだった。父に悠を引き取ってくれないかと泣いてせがんだ記憶もある。

 施設に入ったときの私は絶望の淵にいた。
 入院した父が心配で、不安と恐怖から閉じこもり、学校にも行けずにいた。
 かといって施設にも馴染めなくて、虐めにあった。子どもたちからすれば、鬱々として泣いてばかりいた私が鬱陶しかったんだろう。

 弟の前では元気そうにしていたけれど、食べ物が喉を通らず、いっときは声も出せなくなっていた。みるみる痩せていくのが自分でもわかっても、どうしようもなかった。

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