内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「三年前にお父さんが亡くなったんだ。病気でね。私が施設に預けられたあのときの怪我が原因みたい。頭の怪我だったからね」

 父が亡くなったのは、私が大学に入学して間もなくだ。父は見届けるようにして静かに息を引き取った。

「そうだったのか。それは残念だったね」

 申し訳なさそうに表情を曇らせるけれど、悠はもっと寂しい思いをしているはず。出会ったときにはすでに、悠には家族がいなかったのだから。

「うん。でもね覚悟していたから。むしろ長く生きられたって思うし」

「そっか。弟の守は? 元気にしてる?」

「元気元気、大阪の大学に通ってるよ」

 大学名を言うと「おお、優秀だね」と褒めてくれた。

「お母さんはあれきり?」

「そうだよ。どこかですれ違ってもお互いわからないだろうしね」

 母は私にとってとっくの昔に他人になっている。母について聞かれてもまったく心が動かないほどに遠い存在だ。

< 32 / 158 >

この作品をシェア

pagetop