内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
「じゃあ、行こうか」

 部屋をとって戻ってきた悠は、なにも聞かなかった。

「うん」

 席から立ち上がった瞬間にわかった。私ちょうどいい感じに酔っている。
 最後に一気飲みしたワインが効いたらしい。

 私は酔うと楽しくなるタイプだ。今だって、声を出して笑ってしまいそう。

 この状況がおかしくてたまらない。

 エレベーターの中はふたりきり。
 私はビッチなのだからと早速、悠の腕に手を回して、ちょっと甘えてみた。

 悠の腕に、側頭部をすりすり。

「ふふ」

「酔ってるな?」

「うん。でも、ほんのちょっとだけだよ?」

 エレベーターが止まったのはバーよりも上の階だった。部屋から見る夜景はさらに綺麗なんだろう。
 そう思うだけで、ますます楽しくなってくる。

 明日は遅番で、お昼ごろに行けばいいから、ちょうどよかった。

 部屋でもう少しお酒を飲んで、その勢いでなるようななれだ。

 悠は、もしかして緊張してる?

 恋人だったらこんなときこそ、チュッとキスするんだろうに、悠はそんな様子も見せない。

 かわいいな、ふふ。

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