内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 実は私もまったく経験はないんだけれど、恋愛小説はたくさん読んでいる。なかにはリアリティたっぷりな濃厚ラブシーンのものもあって、雰囲気はバッチリわかってるから、きっとばれたりしないと思う。

 大丈夫だよ悠。心配しないでね。
 心でそう呼びかけて、腕を掴む手にギュッと力を入れた。

 悠はカードキーで、ドアを開ける。
 いよいよだ。

「うわー、広い!」

 廊下の奥に広がるのはリビングルームだ。
 ベッドルームと別になっているなんて、かなりいい部屋なんじゃない?

「ソファー、ふっかふかだ」

 勢いよく座ってバウンドしてみたり、ことさら明るく振る舞った。

 だって楽しいじゃない。これから家族を作るんだから。

 小走りに窓際に行き、夜景を見下ろす。

「綺麗だねー」

 隣に立った悠が、私の肩を抱く。
 その瞬間はハッと胸が高鳴ったけれど、素知らぬふりをする。

「悠、こんな贅沢なお部屋、いいの?」

「せっかくの記念だからね。いい部屋を取ってみた」

「そっか。悠の初体験記念だもんね」

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