内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました


「ついに見つけたんだ」

「おー。ずっと前から探しているっていうやつか?」

 うなずいてみせたが、仁には人を捜しているとは言っていない。探し物は母の形見か、とでも思っているかもしれない。

「よかったな」と、仁が笑みを浮かべたところで、木製のわっぱが出てきた。

 目の前で蓋が開けられて見えた中身は、海の幸の宝庫。

「わっぱ飯か」

「今日はほかにもあるぞ。美味い毛ガニとイクラが入ったからな」

 カニみそとカニの身が毛ガニの甲羅の上で炙られたものに、鮭の入った粕汁。

 やっぱり飯はここがいいと、しみじみ思う。
 そのうちここに千絵を連れてこようかと、ふと思った。

『実は経験がなくてね。女の子ならまだしも、いい歳して恥ずかしいだろ』

 我ながらうまい嘘だった。

 恋は期待できない。
 千絵にとって恋は母親が残した悪夢、トラウマでしかないから。

 それに、僕が引き取られた先が神林家で、シルKUの副社長だなんて知ろうものなら、千絵は僕に一線を引き、なにを言っても逃げるに違いない。

 それがわかっていただけに、あの嘘に掛けた。

 だけど、千絵はなんであんな嘘をついたんだ?

『私ね、こうみえてビッチなの』

 ビッチは僕なのに。
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