内緒の出産がバレたら、御曹司が溺甘パパになりました
 気持ちを落ち着けたくて、お茶を飲んでゆっくりと息を吐いた。

「単刀直入に言おう。ここに一千万入っている。これで悠と別れてほしい」

 テーブルの上に置かれたのはトートバッグだ。それほど大きくはないけれどずっしりと重たそう。

 なんの反論もない。
 私たちは付き合っていませんがと言ったところで通用しないだろうし。

 ただ、心配なのは悠だ。
 もう会わないと告げるだけで納得してくれるかどうか。

 もう少しすれば妊娠しているかどうかがわかる。
 子どもができたと確認できたら、すぐにでも行方をくらます予定でいたけれど、わかるまでの猶予が欲しい。

 紫violaを辞めたくないのだ。だから――。

 少しだけ待って欲しいと言いかけたとき、お父さまはさらに一枚の紙をスッと差し出した。

 ん?
 これはもしや小切手というものか?

 金額は、と数えて。

 ご、ごせんまんえん!

「これで姿を消してほしい。手切れ金のほかにこれだけあれば、君も生活に困らないだろう」

 ああ……。

 体から力が抜けた。

 私は二度と悠に会っちゃいけないんだ。

 これでいいんだよね。

 金目当てだと思われようが、もし、赤ちゃんがきたなら私に必要なのはお金なのだから。

「わかりました」


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