クールなご主人様は溺愛中
「そして、私たちは結婚した。あの人のご両親は、苦労すると私に諭しながらも歓迎してくださった」


懐かしそうに目を細め、穏やかに語るお母さんにさっきまでの恐怖心はなくなっていた。


「そして、私たちの結婚披露宴の時。たくさんの有名会社の社長や政治家を呼んで執り行われた」


ふっとお母さんの表情が曇る。


「周りから聞こえる嘲笑や向けられる哀れみの目。直接言ってくる人もいたわ」


お母さんが、一般の人だから。


それくらい、私にもわかった。


「だからね、マナーやいくつかの基本芸能を死ぬ気で勉強した。
でも、周りの目は変わらなかった。それから、ああいう場が怖くなって、出席できなくなったの」


そこまで話すと、お母さんは私を真っ直ぐに見た。


「里奈さん、あなたにそんな思いはして欲しくない」
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