クールなご主人様は溺愛中
「帰りません。そもそも、あなたが私をあそこへ送り込んだんでしょう?」


初めての反抗に母は一瞬顔を曇らせる。


「それなら、尚更、帰ってこない?」


「嫌です」


「ねえ......」


「私は、あなたたちとはもう二度と暮らしたくありません。会いたくもないです」


そこまで言い切ると、怒りをあらわにした母の手が振り上げられる。


久しぶりに襲ってくるであろう痛みに備えてぎゅっと目をつむる。


その瞬間、私を何かが包み込んだ。


「なっ......」


母の声に恐る恐る目を開けると、彼女の手は私の真横である人に掴まれていて、お腹には腕が回されている。


「里奈、大丈夫か?」


「冬夜くん......」


「離しなさいよ。この子のしつけよ!」


母が声を荒げれば、冬夜くんは冷たい視線で黙らせる。
< 251 / 268 >

この作品をシェア

pagetop