やわく、制服で隠して。
昼休みが終わる十分前を知らせる予鈴が鳴った。
「行こ。」
深春が立ち上がって、私に手を差し出してくる。
その手を掴もうと出した私の左手の小指から、深春はスルッとリボンを解いた。
自分で結んだリボンを。
一生解けないんじゃないかって思うくらいの圧を感じたリボンを、深春はいとも簡単に解いた。
私の表情を読み取ったのか、深春がクスリと笑って、教室から飛び出した時と同じように、私の手を引いて立ち上がらせた。
深春と同じ目線に立った私に、深春は自分のリボンを差し出した。
「結んでよ。」
「私が?」
「私のことが嫌いじゃないなら、今度はまふゆが結んで。」
嫌いだなんて、って私は言いかけたけれど、何も言わずに深春の手からリボンを受け取って、深春の首の後ろから回したリボンを、そっと制服に結んだ。
人に結んであげるのは初めてで、変な感覚になる。
少し不恰好になってしまったけれど、深春はありがとうって言って微笑んだ。
昼休みが終わるギリギリに教室に戻って、広げたままのお弁当やサンドイッチを急いで片付けた。
私の席で食べていたから、深春が使っていた机は違う子の物で、席には戻っているけれどお弁当箱をそのままにしてくれていたその子に、深春がごめんねって謝った。
普段はあまり表情が変わらない、珍しく少しだけ微笑む深春に、その子は見惚れるように「いいよ。」って言った。
その表情に、私の心臓がまたトクンッて鳴った。
見ないでって思った。
私のなのに…、そう思ってしまった自分の想いを、消してしまいたかった。
深春が触れた頬、小指の先の熱を、そっとリボンを結んであげる時の、静かな吐息を、深春の独占欲を知らないくせに。
何も悪くないクラスメイトにさえ芽生えた嫉妬。
“友達”だから?“特別”だから?
私がおかしくなっていく。
何も分からなくなってしまう。
深春の一挙一動が私を変えていく。
「あとでね。」
深春が私の耳元で囁いた。
五時間目の始まりを告げるチャイムの音。
それよりも近い、直接脳内に響いてくるような深春の声。
それは、深春の毒だって、思ってしまった。
その毒に侵されることを望んでいたのは、私だった。
「行こ。」
深春が立ち上がって、私に手を差し出してくる。
その手を掴もうと出した私の左手の小指から、深春はスルッとリボンを解いた。
自分で結んだリボンを。
一生解けないんじゃないかって思うくらいの圧を感じたリボンを、深春はいとも簡単に解いた。
私の表情を読み取ったのか、深春がクスリと笑って、教室から飛び出した時と同じように、私の手を引いて立ち上がらせた。
深春と同じ目線に立った私に、深春は自分のリボンを差し出した。
「結んでよ。」
「私が?」
「私のことが嫌いじゃないなら、今度はまふゆが結んで。」
嫌いだなんて、って私は言いかけたけれど、何も言わずに深春の手からリボンを受け取って、深春の首の後ろから回したリボンを、そっと制服に結んだ。
人に結んであげるのは初めてで、変な感覚になる。
少し不恰好になってしまったけれど、深春はありがとうって言って微笑んだ。
昼休みが終わるギリギリに教室に戻って、広げたままのお弁当やサンドイッチを急いで片付けた。
私の席で食べていたから、深春が使っていた机は違う子の物で、席には戻っているけれどお弁当箱をそのままにしてくれていたその子に、深春がごめんねって謝った。
普段はあまり表情が変わらない、珍しく少しだけ微笑む深春に、その子は見惚れるように「いいよ。」って言った。
その表情に、私の心臓がまたトクンッて鳴った。
見ないでって思った。
私のなのに…、そう思ってしまった自分の想いを、消してしまいたかった。
深春が触れた頬、小指の先の熱を、そっとリボンを結んであげる時の、静かな吐息を、深春の独占欲を知らないくせに。
何も悪くないクラスメイトにさえ芽生えた嫉妬。
“友達”だから?“特別”だから?
私がおかしくなっていく。
何も分からなくなってしまう。
深春の一挙一動が私を変えていく。
「あとでね。」
深春が私の耳元で囁いた。
五時間目の始まりを告げるチャイムの音。
それよりも近い、直接脳内に響いてくるような深春の声。
それは、深春の毒だって、思ってしまった。
その毒に侵されることを望んでいたのは、私だった。