やわく、制服で隠して。
乱雑に放り出された私の靴下とは逆に、自分で用意したのであろうネイビーのハイソックスを、彼は丁寧に私に履かせた。
靴下を私に履かせながら、次第に呼吸が荒くなっていた。反対に、私は呼吸を止めていた。
普通に呼吸をしてしまえば、口から溢れ出すのはきっと悲鳴だ。
「出来た。」
満足げに言った彼に、私は何も答えることが出来ない。
だけどそんなことは、どうでもいいみたいで、素早く手に取ったブレザーを渡してくる。
「はい。最後の仕上げ。」
震える手で受け取った。
生まれて初めてのブレザーにゆっくりと袖を通す。
重たいと感じたし、知らない誰かの匂いがする。
私にはそれが、不快で堪らなかった。
「立って。」
命令するように言う彼に、抵抗することも出来ずに立ち上がる。
まふゆ、まふゆと名前を連呼しながら足やウェストに触れてくる彼を見下ろした。
私がどんな表情をしているかも知らずに、呼吸を荒げてベタベタと触り続ける彼を、蹴り飛ばしたい。
なのに私の体は動かない。怖い…。
「最高だよ。」
「もう…、着替えたい。」
「何言ってんの。今着たばっかりじゃん。あー、やっぱり思った通り。ギャルとブレザーって最高だわ。」
「は…?」
「いや、偏見なんだけどさ、ブレザーってちょっと優等生ってイメージあるんだよね、俺は。ギャルとブレザーはあんまり結び付かないって言うか。だからまふゆに着てみて欲しかったんだよ。せっかく傍にギャルが居るのに、こんなチャンス逃せないだろ。」
「すごい偏見…。」
「だから言ったじゃん。俺の偏見だって。みんながみんなそういうわけじゃないって分かってるよ。」
「…それに私、ギャルなんかじゃ…。」
「ギャルだろ、まふゆは。」
立ち上がって、今度は私の胸元や顔、髪の毛に触れながら、可愛いよって彼は声を漏らし続けた。
「確かにまふゆはかなり偏差値は上がったけどさ、まふゆはまふゆだよ。俺が家庭教師をしてた中学生の時のまふゆのまま。子供で、ギャルで…、最高だよ。」
彼の指先がナイフに見える。
全部を切り裂かれる。私の何もかもを。
プライドも青春も貞操も。
怖い。怖い怖い怖いこわい…怖いよ深春…助けて。
悲鳴は口から出てこない。噛み締めた歯がギリッと鳴った。
彼は気付かない。その指で私を切り裂いていく。
「…ねが…い…やめて…。」
届かない声を繰り返した。一つ、“私”を失くしてしまった気がした。
靴下を私に履かせながら、次第に呼吸が荒くなっていた。反対に、私は呼吸を止めていた。
普通に呼吸をしてしまえば、口から溢れ出すのはきっと悲鳴だ。
「出来た。」
満足げに言った彼に、私は何も答えることが出来ない。
だけどそんなことは、どうでもいいみたいで、素早く手に取ったブレザーを渡してくる。
「はい。最後の仕上げ。」
震える手で受け取った。
生まれて初めてのブレザーにゆっくりと袖を通す。
重たいと感じたし、知らない誰かの匂いがする。
私にはそれが、不快で堪らなかった。
「立って。」
命令するように言う彼に、抵抗することも出来ずに立ち上がる。
まふゆ、まふゆと名前を連呼しながら足やウェストに触れてくる彼を見下ろした。
私がどんな表情をしているかも知らずに、呼吸を荒げてベタベタと触り続ける彼を、蹴り飛ばしたい。
なのに私の体は動かない。怖い…。
「最高だよ。」
「もう…、着替えたい。」
「何言ってんの。今着たばっかりじゃん。あー、やっぱり思った通り。ギャルとブレザーって最高だわ。」
「は…?」
「いや、偏見なんだけどさ、ブレザーってちょっと優等生ってイメージあるんだよね、俺は。ギャルとブレザーはあんまり結び付かないって言うか。だからまふゆに着てみて欲しかったんだよ。せっかく傍にギャルが居るのに、こんなチャンス逃せないだろ。」
「すごい偏見…。」
「だから言ったじゃん。俺の偏見だって。みんながみんなそういうわけじゃないって分かってるよ。」
「…それに私、ギャルなんかじゃ…。」
「ギャルだろ、まふゆは。」
立ち上がって、今度は私の胸元や顔、髪の毛に触れながら、可愛いよって彼は声を漏らし続けた。
「確かにまふゆはかなり偏差値は上がったけどさ、まふゆはまふゆだよ。俺が家庭教師をしてた中学生の時のまふゆのまま。子供で、ギャルで…、最高だよ。」
彼の指先がナイフに見える。
全部を切り裂かれる。私の何もかもを。
プライドも青春も貞操も。
怖い。怖い怖い怖いこわい…怖いよ深春…助けて。
悲鳴は口から出てこない。噛み締めた歯がギリッと鳴った。
彼は気付かない。その指で私を切り裂いていく。
「…ねが…い…やめて…。」
届かない声を繰り返した。一つ、“私”を失くしてしまった気がした。