やわく、制服で隠して。
どれだけの人を巻き込んでしまったのだろう。
浅はかな考えが、一つの過ちが、考えもしないほど大きなことになってしまった。
「深春ちゃん、送っていくよ。乗りなさい。」
パパが深春を車に促した。それを深春は断った。
「いえ。近くなので大丈夫です。まふゆ、またね。」
「私も深春と一緒に歩いて帰る。」
「何言ってるの!乗りなさい!」
深春の隣に行こうとした私の腕を、ママがヒステリックに掴んで車に押し込んだ。
「まふゆ。また連絡する。ゆっくり寝てね。」
「深春ちゃん。本当にありがとう。感謝しても足りないよ。後日、ご自宅に伺うから。お父様に宜しく…。」
「はい。」
深春とパパが頭を下げ合って、深春が手を振ってきたから振り替えした。
パパが車に乗り込んでゆっくりと走り出す。
深春は車が角を曲がるまでずっと見ていてくれた。私も深春が見えなくなるまでずっと見ていた。
夜になって、パパが深春の家に電話をかけた。
謝罪に行きたいというパパの申し出を、深春のお父さんは「自宅に居ることが少ないから」と断った。
「まふゆちゃんが落ち着いたら遊びにくるようにお伝えください。」
パパから伝えられた伝言に、涙がこぼれた。
ベッドの中に入ってもあの時の光景がフラッシュバッグして苦しかった。
私の為に駆けつけてくれた人達の顔、悦に浸る彼の表情、カッターを握り締めて叫ぶ深春の声。
焦点の合わないママ。絶望したパパの顔。
ママは、家に帰ってきてからすぐに寝室にこもってしまって、扉の前で言った「ママ、ごめんね。」って私の言葉に、ママの返事は無かった。
ベッドの中で丸まった。真冬みたいに寒くて、毛布をギュッと体に巻いて、自分の体温を感じた。
首が、グッと詰まる感覚が残っている。
本当は怖くて堪らない。
これからも彼が日常を過ごすのだと思うと、いつ約束が破られるか、いつ私の目の前に現れるか、これからずっと外に出るたびにビクビクして暮らしていくのか。
そういう考えばかりが頭の中をグルグル回って気が狂いそうだった。
全部無かったことにできるスイッチがあればいいのに。
全部最初から…。中三のあの頃から全部…。
そしたら深春のことも…全部消えちゃうんだ。
深春。深春…。
深春のことだけが救いだった。心を支えるものがもう、深春しか居ない。
会いたくて堪らない。頭の中で何度も深春の名前を呼んだ。
何度も、何度も。
そうしていれば私は大丈夫だって。
そう思えたから。
浅はかな考えが、一つの過ちが、考えもしないほど大きなことになってしまった。
「深春ちゃん、送っていくよ。乗りなさい。」
パパが深春を車に促した。それを深春は断った。
「いえ。近くなので大丈夫です。まふゆ、またね。」
「私も深春と一緒に歩いて帰る。」
「何言ってるの!乗りなさい!」
深春の隣に行こうとした私の腕を、ママがヒステリックに掴んで車に押し込んだ。
「まふゆ。また連絡する。ゆっくり寝てね。」
「深春ちゃん。本当にありがとう。感謝しても足りないよ。後日、ご自宅に伺うから。お父様に宜しく…。」
「はい。」
深春とパパが頭を下げ合って、深春が手を振ってきたから振り替えした。
パパが車に乗り込んでゆっくりと走り出す。
深春は車が角を曲がるまでずっと見ていてくれた。私も深春が見えなくなるまでずっと見ていた。
夜になって、パパが深春の家に電話をかけた。
謝罪に行きたいというパパの申し出を、深春のお父さんは「自宅に居ることが少ないから」と断った。
「まふゆちゃんが落ち着いたら遊びにくるようにお伝えください。」
パパから伝えられた伝言に、涙がこぼれた。
ベッドの中に入ってもあの時の光景がフラッシュバッグして苦しかった。
私の為に駆けつけてくれた人達の顔、悦に浸る彼の表情、カッターを握り締めて叫ぶ深春の声。
焦点の合わないママ。絶望したパパの顔。
ママは、家に帰ってきてからすぐに寝室にこもってしまって、扉の前で言った「ママ、ごめんね。」って私の言葉に、ママの返事は無かった。
ベッドの中で丸まった。真冬みたいに寒くて、毛布をギュッと体に巻いて、自分の体温を感じた。
首が、グッと詰まる感覚が残っている。
本当は怖くて堪らない。
これからも彼が日常を過ごすのだと思うと、いつ約束が破られるか、いつ私の目の前に現れるか、これからずっと外に出るたびにビクビクして暮らしていくのか。
そういう考えばかりが頭の中をグルグル回って気が狂いそうだった。
全部無かったことにできるスイッチがあればいいのに。
全部最初から…。中三のあの頃から全部…。
そしたら深春のことも…全部消えちゃうんだ。
深春。深春…。
深春のことだけが救いだった。心を支えるものがもう、深春しか居ない。
会いたくて堪らない。頭の中で何度も深春の名前を呼んだ。
何度も、何度も。
そうしていれば私は大丈夫だって。
そう思えたから。