やわく、制服で隠して。
次の日。
平日の金曜日だったけれど、学校を休んだ。
休むのは入学してから初めてだった。
「まふゆ、学校どうするの。」
部屋の扉の前まで声をかけに来たママに「行かない。」とだけ答えた。
「そう。ママ、頭痛がするから寝てるわね。ご飯とか自分でしてちょうだい。夕飯はするから。」
ママの小さい声が聞こえてくる。いつもより低く聞こえるのは多分、気のせいなんかじゃない。
「ママ。私、夕飯もいらないよ。お腹が空いたら自分でやるから。ありがとう。」
「そう。」
短い返事と共に、ママの足音が遠ざかっていく。
二度と近付けないみたいな音に聞こえて怖かった。
昨日のママとパパの表情を思い出すと胸が痛い。
二人を傷付けたのは彼じゃない。私だ。
九時過ぎ。朝礼が終わる頃の時間に深春からメッセージが届いた。
“ゆっくり休んでね”
短いその一言だけが、今の私に必要な唯一の薬だった。
次の日。
土曜日だったからパパも家に居て、一緒に遅めの昼食を食べていた。
ママはまだ体調が悪いって言って、部屋から出てこなかった。
「今日もお茶漬けかなー。」
「ごめんね…。」
おどけて言ったパパに、真剣に謝った私を見て、パパは慌てふためいた。
「違うよまふゆ。まふゆを責めてるわけじゃないんだ。ほら、ママは元々体がそんなに強くないから。まふゆのせいじゃないよ…。」
「ん…。」
気まずい雰囲気がリビングに流れて、その空気を切り裂くように、インターホンが鳴った。
「誰だろう。来客の予定は無かったと思うけど。」
パパがパスタを食べていたフォークを置いて、立ち上がった。
深春かもしれない。
そう思った私も椅子から立ち上がって、玄関へ向かった。
既にパパが扉を開けていて、そこに立っていたのは彼と、一人の女性だった。
彼の顔を見た途端、嗚咽がこみ上げた。
リビングに戻って思いっきり扉を閉める。
バタンッと激しい音が響いて、階段の上からママの「何やってんの!?」って声が聞こえた。
震えが止まらない。どうして?何をしに来たの?
ママが階段を下りてくる音が聞こえる。
リビングの扉は木枠で上半分が磨りガラスになっている。ママの影が見えた。
扉が開いて、パパの後に続いて、彼と、一緒に居た年配の女性、その後ろからママがリビングに入って来た。
ソファの脚元でうずくまるようにしていた体を起こしてリビングを飛び出そうとしたけれど、パパに止められた。
「パパっ…離して!」
「隣に居るから。大丈夫だから。彼のお母様が謝罪にいらしたんだよ。」
「だったら何よ!パパだけ聞けばいいじゃない!」
「まふゆのことだから、まふゆも聞きなさい。」
「何でそんなこと言うの!酷いよパパ!私…!」
涙が次々に流れて、喉がズキズキ痛んだ。
恐怖で指先が冷たい。
顔を見るだけでこんなに恐ろしいのに、なんでパパは強要するの…。
「まふゆ。辛いのは分かる。パパもまふゆにこんな思いをさせるのは辛いよ。でもけじめをつけよう。一緒に。じゃないといつまでも動き出せないだろう。」
平日の金曜日だったけれど、学校を休んだ。
休むのは入学してから初めてだった。
「まふゆ、学校どうするの。」
部屋の扉の前まで声をかけに来たママに「行かない。」とだけ答えた。
「そう。ママ、頭痛がするから寝てるわね。ご飯とか自分でしてちょうだい。夕飯はするから。」
ママの小さい声が聞こえてくる。いつもより低く聞こえるのは多分、気のせいなんかじゃない。
「ママ。私、夕飯もいらないよ。お腹が空いたら自分でやるから。ありがとう。」
「そう。」
短い返事と共に、ママの足音が遠ざかっていく。
二度と近付けないみたいな音に聞こえて怖かった。
昨日のママとパパの表情を思い出すと胸が痛い。
二人を傷付けたのは彼じゃない。私だ。
九時過ぎ。朝礼が終わる頃の時間に深春からメッセージが届いた。
“ゆっくり休んでね”
短いその一言だけが、今の私に必要な唯一の薬だった。
次の日。
土曜日だったからパパも家に居て、一緒に遅めの昼食を食べていた。
ママはまだ体調が悪いって言って、部屋から出てこなかった。
「今日もお茶漬けかなー。」
「ごめんね…。」
おどけて言ったパパに、真剣に謝った私を見て、パパは慌てふためいた。
「違うよまふゆ。まふゆを責めてるわけじゃないんだ。ほら、ママは元々体がそんなに強くないから。まふゆのせいじゃないよ…。」
「ん…。」
気まずい雰囲気がリビングに流れて、その空気を切り裂くように、インターホンが鳴った。
「誰だろう。来客の予定は無かったと思うけど。」
パパがパスタを食べていたフォークを置いて、立ち上がった。
深春かもしれない。
そう思った私も椅子から立ち上がって、玄関へ向かった。
既にパパが扉を開けていて、そこに立っていたのは彼と、一人の女性だった。
彼の顔を見た途端、嗚咽がこみ上げた。
リビングに戻って思いっきり扉を閉める。
バタンッと激しい音が響いて、階段の上からママの「何やってんの!?」って声が聞こえた。
震えが止まらない。どうして?何をしに来たの?
ママが階段を下りてくる音が聞こえる。
リビングの扉は木枠で上半分が磨りガラスになっている。ママの影が見えた。
扉が開いて、パパの後に続いて、彼と、一緒に居た年配の女性、その後ろからママがリビングに入って来た。
ソファの脚元でうずくまるようにしていた体を起こしてリビングを飛び出そうとしたけれど、パパに止められた。
「パパっ…離して!」
「隣に居るから。大丈夫だから。彼のお母様が謝罪にいらしたんだよ。」
「だったら何よ!パパだけ聞けばいいじゃない!」
「まふゆのことだから、まふゆも聞きなさい。」
「何でそんなこと言うの!酷いよパパ!私…!」
涙が次々に流れて、喉がズキズキ痛んだ。
恐怖で指先が冷たい。
顔を見るだけでこんなに恐ろしいのに、なんでパパは強要するの…。
「まふゆ。辛いのは分かる。パパもまふゆにこんな思いをさせるのは辛いよ。でもけじめをつけよう。一緒に。じゃないといつまでも動き出せないだろう。」