椅子こん!
──なにかを好きな人が、妬ましいね。

──なにかを期待し続けられる人は、憎いね。
──生きてても、出来ないなら、どうして
私もあなたも、生れたのかな。
とても不公平だわ。

──好きなものを、守り通すこと

──好きなことを、守り通すこと

それはとてもとても、遠い場所にあって、とてもとても儚く脆い願い事。
誰かが夢見たこと。
ずっと、夢見たこと。
何もかも、あらゆる全てを使ってでも、誰かが叶えたかったこと。
何もかも、あらゆる全てを使ってでも、誰かに届かなかった、とても困難で、残酷な願い事。
 ちょっと泣くだけで済むやつと、
これから先未来の無いやつの痛みが同じだとでも言うのか。
死者は死者として可能性を見せつけられ続ける。

悪魔の家。
 10年ほど前、悪魔と言い触らして、44街が直々に「悪魔の住む家に他者が近付かないように」とお触れを出した。そして今もなお、観察屋やハクナが徹底的に監視している家。


「コリゴリがアサヒを取り逃がした。
夜になるから引き上げたが……アサヒが『コクる』までにはどうにか捕らえねば! コクってからでは取り返しがつかない」

会長は部屋で一人、ハクナの指揮をとる男の言葉を思い出していた。

「悪魔の周辺で、スライムに続き、コリゴリまで亡くなった……」
 コクられるというのが本当なのかは会長は知らない。確かなのは、あの家でなにかがあったということだ。
会社を建て、日陰に追いやるように隠し続けてきた悪魔の家。
 悪魔の彼女を、そうやって蚊帳の外にして、強制恋愛政策を強引に進めてきた。
スライムのクラスター発生を予測出来なかったのは本部のミスだ。
 観察され続けるとはいえ、外出は出来るし、役場に出向いて恋人届を出すくらいなら悪魔にもいつでも可能だったのだから。
しかし、(『代理の彼女』が働かないってことよね────?)
彼女が何かアクションをするときには、代理の彼女、を横に設置し、人間のみんなは本人じゃなくても代理の彼女に話しかけることで悪魔と会話したことにしてもらえる制度も出来ていた。
なのに……観察屋によると役場に訪れた彼女が出した恋人届けは、普通に提出され──だからこそ、クラスターが発生したのだ。
この時点で不審に思わねばならない。
なぜなら。
「代理の彼女」が、彼女と同じ動きを出来なかったのだから。






「アハハハハハハハハハ!
アハハハハハハハハハ!
アハハハハハハハハハ!!!!
人を好きになれなんて────人を好きになれるなんて──!! 
そんなやつが、居たらいけないんだ!!!

そんなやつが、目の前に居たらいけないんだ!!!

そんなやつが、

他人に、何か喋るな!!!

これ以上、これ以上その言葉をお前が使うな!!





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