椅子こん!
「恐れていたことが起きてしまった」
 早朝。
 カグヤたちを追っている万本屋北香が、
観察屋のエリートの一人……同僚から連絡をもらったとき、彼女はまだマンションの自室で目覚めてパジャマ姿のままだった。
昨晩はいろいろとあったが、無事にあの三人を誘きだすことに成功した。
(ヨウさんの言った通りだ。盗撮をアニメ作品として販売すれば何ら問題にならずに情報を利用出来る! こんな抜け道があったとは)
ハクナの一人、そして作家である『ヨウさん』が、メグメグの抗議やたちの活動を快く思ってないのは知っている。
 だからこそ、ヨウさんはこうして公に示したのだ。『止められるものなら止めてみろ、世界は我等の味方だ』と。今もまだ公民館の一室で取り調べが続いているものの、彼女は一度、交替のものとかわり仮眠と着替えをしに帰宅した。

《アサヒの身体が、悪魔と何らかの関わり
を持つ異形に乗っ取られているように見えたんです》
「なんだと……それは本当か」
《ええ、一瞬でしたが。そして悪魔のことを姫、と呼んで居ました》
 姫────か。
もしかすると、もしかするかもしれない。

創立当初の資料のことを北香は知って居る。
 今や、いかにも怪しい恋愛総合化、を掲げる団体の犬をやってはいるけれど、今の会長のことは少し疑問に思っていて、創立当初の資料を漁ったのだ。
 そこには44街の神様信仰の話があった。
姫──もしも、あの神話の続きがあるのなら。彼女たちに、なにか意味があるのなら……

《悪魔が、また犠牲者を生むのでしょうか、監視を強めたほうが?》
「待て。私が会長に聞いてみよう」 


あれは、ハクナたちのほとんど、恋愛総合化学会員のほとんどが今や悪魔と思い込まされている存在。
それが、「姫」と呼ばれる。
 なにより、なぜあの子を、我々が日頃から見張るのだ?
せつ、など用意して。

面白い。
面白そうな、なにかが間違いなく絡んでいる。

(学会当初と、変わった現在────私は、どちら側に、つくのだろう?)


 脳裏に過るのは、幼い頃のクラスメイト。
倉庫のなかで恋を知るために殺した犬。
つがいを信じるものたちが支配する教室。
気持ちが信じられないものたちが、異端視され、排除される空間。
忘れた、わけじゃない。
私にも、他人の気持ちなどわからない。

(会長のいう、運命のつがいが本当にあるのなら──どうして……あの子は犬を殺さなくてはならなかったんだ。恋愛なんて感情が実在する確固たる証拠もないのに)

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