離婚前夜に身ごもったら、御曹司の過保護な溺愛に捕まりました
 男性は顔を真っ赤にしながら置物をのせた台座を蹴り飛ばし、女性を伴って外へ出ていった。

 騒ぎの元凶が立ち去ると智秋は立ち尽くした私の手を握り直し、不安げに様子を窺っていたお客様へ頭を下げた。

「お騒がせして大変申し訳ございませんでした」

 私も慌てて同じように続け、智秋の隣でお客様に非礼を詫びる。

「いやあ、東京の人は元気でよろしいなあ」

「たちばなさんのサービスはさすがやわ。ちゃあんとお客様に合わせてねえ」

 温かい励ましにしては、どうも裏を感じてならない冷たさがある。

 ほかのお客様からも優しい言葉をかけられながら、智秋は私を連れて従業員室に向かった。

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